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住宅を建てて施主に引き渡すことは、住宅会社にとっては1つの区切りではありますが、家族にとっては、入居してから「暮らし」がスタートします。
お客様が本当に満足を得るのは長年住み続けた後であることを思えば、そこからが本当のスタートと言っても過言ではありません。
住宅会社にとって引き渡し後の「アフターサービス」は、通常あまり利益を生まないどころか費用を請求できない場合も多く、コストがかかるだけなので、できる限り少ない方が望ましいものと考えられています。
しかし、見方を変えればアフターサービスはそれによってお客様に安心感を与えることができ、お客様とのつながりを維持することにも役立つ、住宅会社にもメリットがある活動といえます。
定期的にオーナー様を訪問する仕組みを作った会社たち
理想を言えば「家と家族をずっと見守り続けるアフターサービス」ができればそれに越したことはありません。しかし、特に小さな工務店では、なかなか専任でアフター担当を置くことができず、手が回らなくなり、クレームが発生してからの対応になってしまう例が少なくないようです。
一方、一部の住宅会社では引き渡し後60年間は年1回以上訪問、あるいは30年目まで無料の定期点検スケジュールを組むなど、住宅寿命60年を見据えて定期的なオーナー訪問も含めて長期のアフターサービスを仕組み化する動きが住宅業界で広まりつつあります。
関西のとあるハウスメーカーでは家が転売されて持ち主が変わっても「家が建っているうちは」と訪問を続けて不具合を確かめ、メンテナンスを続けて「評判」の維持に気を使っています。
定期的にオーナーを訪問する仕組みを作ったA社では、当初は訪問の度にクレームの怒声を浴びることもあったものの、現在では小さなクレームに素早く対応することで逆に信頼を得られることがわかり、欠かせない仕組みになったといいます。
不具合は小さいうちに修繕を。小さな喜びの積み重ねが信用を得る
剥がれた敷石を放っておくと、その周囲も剥がれやすくなるように、住宅の不具合は小さなうちに手を打つことが肝心です。
小さなうちに修繕すればコストもかからずお客様の信頼を得ることができるのに対して、深刻なまでに広がってからでは、大きな費用をかけても信用を損なうことは避けられません。
そして小さな不具合に手を打つためにはお客様との密なコミュニケーションが必要です。
コミュニケーションがあれば、直すほどでもないと思っているような小さな不具合でも「そういえば、キッチンの水回りが・・・」のように早めに聞きつけて対応することが出来ます。
定期的なオーナー訪問制度を持つ会社の担当者は、そんな対応が可能になることでかえって顧客に感謝される機会が増えただけでなく、オーナー家族の成長を見守ることも楽しみになったといいます。
お客様にむらのない対応ができる社員教育の必要性
定期的にオーナー訪問をしていても、対処の方法が適切でなければ意味がありません。
アフターサービスで成功を上げるには現場で一貫性のある対応ができる社員の教育が不可欠です。
ベテラン社員から新入社員まで、保証、修繕範囲に対する認識を統一し、オーナーに対する回答は同じでないとなりません。
むらのある回答はオーナーから信頼を損なうきっかけにもなります。オーナーは同じ家に住み続けるけれども、自社の担当者が代わるということは少なくありません。
常日頃から社内での認識の共有、各オーナーへの対処履歴をデータとして残しておくことで、どの社員が対処してもむらのない対応が可能となり、オーナーとの信頼関係を継続させることができるでしょう。
まとめ
人は何か困った時に、まずは「そばに居る人」に相談をするものです。
その「そばに居る人」に専門知識があり、そして自分を尊重してくれると信頼のおける人ならば、そのまま注文してしまうことも珍しくなく、自分の友人へも紹介してくれるものです。
オーナーにとってずっとそばに居る、頼れる存在であることが次の注文へつながります。
アフターサービスとは顧客維持に加えてそんな追加受注や新規獲得の手段として捉えるべきなのです。