工務店の「KPI」経営

売れる仕組み
2024年02月08日 by 小松 壮幹

目次

こんにちは、ジョンソンパートナーズ小松です。

ビジネス用語として「KGI」「KPI」「KDI」という言葉をよく耳にするようになりました。地域工務店のような中小企業からすると「大企業が取り入れているカッコつけた流行り言葉」と感じてしまいます。そもそも横文字なのが"とっつきにくさ"を増長しています。

しかしながら、その「KPI経営」「KPI思考」のエキスを上手に取り入れて業績を向上させている工務店が増えてきているのも事実です。

今回は改めて「KPIとは何か」そして地域工務店における活用法を紹介していきます。

そもそもKPIってなに?

まずは言葉の意味から説明します。覚えるべき単語は3つあります。すべては企業の目標設定に関する言葉です。

KGI:「Key Goal Indicator」の頭文字...経営・ビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標

KPI:「Key Performance Indicator」...KGIを業務プロセスで分解した、業務の過程を評価するための指標

KDI:「Key Do Indicator」...KPI達成のための行動量指標

3つの言葉にある「Key」はキーになるのKEY、「大切な」「重要な」という意味。「Indicator」は直訳すると測量機のこと、「指数」や「指標」といった意味です。

そして真ん中の言葉だけが3つとも異なります。Gは「ゴール」、Dはドゥなので「やること=行動」と訳せばわかりやすいですね。2つ目のPのパフォーマンスはぴんと来ないので、同じPから「プロセス=過程」と考えると理解しやすいと思います。

大ざっぱな事例ですが、町のラーメン屋さんに例えるとこうなります。

KGI(ゴール)を「年間売上3000万」と設定するなら、KPI(プロセス)が「1日売上10万円」、KDI(行動)は「1日50人以上来店させる」「客単価を2000円に上げる」となります。

つまり、目標達成への近道(指標)を数値化して段階的に達成していく方法のことです。「KPI経営」と聞くと、ややこしくて難しい事に感じてしまいますが、いつもやっている事、考えている事をよりシンプルに分かりやすい形でスタッフと共有する手段です。

昭和の時代は「何も語らず背中で教える」のが当たり前でしたが、「数字を使ってわかりやすく伝える」ことをしなければ、今の社員・スタッフはついてきてくれません。達成可能な身近な目標を皆で頑張ってクリアしていこう、という組織管理手法でもあります。

工務店での活用例

工務店の年間計画においてのKGI(ゴール)は「営業利益〇〇万円」、KPIは「完工棟数〇棟」「1棟当たりの利益率〇%」という事になりますが、それだけでは社員や職人ひとりひとりには"やや無関係な目標"に感じてしまいます。なので、部署ごとまたはスタッフごとに1年後の理想の状態(KGI)を設定し、それを実現するための「KPI(プロセス)」「KDI(行動)」にまで目標を落とし込むと、自分ごとして日々の業務に励みが出ます。

KPI図.jpg

部署ごとのKGI

もう少し限定して、社員15~50人程度の中規模工務店を舞台に具体的に掘り下げてみます。中規模工務店であれば、それぞれの部署に複数のスタッフがいらっしゃいます。個人の能力だけでなく「チーム力」を向上させていくためにも部署ごとにそれぞれの「KGI」「KPI」「KDI」を設定すべきです。例えば・・・

・広報部門=KGI:年間〇組の有効面談数(イベント集客数)、KPI:〇組の来場予約数、KDI:毎月〇回のSNSでのイベント誘致

・営業部門=KGI:年間〇組の新規契約、KPI:〇組の次回アポイント数、KDI:毎月〇回の接客ロールプレイング

・設計部門=KGI:契約から着工まで〇日以内、KPI:1組当たりの設計打ち合わせ〇時間以内、KDI:事例写真や図面の整備

・工事部門=KGI:平均〇日の工期短縮、KPI:工程ごとの工期設定、KDI:職人のITツール保有率〇%以上

その他、インテリアコーディネートやアフターサービス、総務や経理などすべての部門でKPIを設定している会社もあります。

部署の優劣をつける訳ではありませんが、直近の1年、1か月の数字達成に向けて最も重要視すべきは「集客」と「契約」のKPIとなります。当たり前の話ですが、集客がなければ契約に至りませんし、契約がなければ設計も工事も仕事になりません。

そこで「契約」と「集客」の2項目のKPIについて、さらに詳しく説明していきます。

契約のKPI

来場から契約を営業の仕事、その手前の来場させるまでを広報の仕事と仮定します。

まずは営業業務ですが、ジョンソンパートナーズでは契約までのプロセスごとに数値指標(KPI)を設定しています。

具体的には 《契約数(KGI)》←《案件化数》←《次回アポイント取得数》←《着座商談数》←《来場・来店》 の中間の3プロセスをKPIに設定して数字と推移をデータ化しています。

また、ここ数年はWEBでの来場予約時に「事前アンケート」を実施しています。来場前にお客様情報や計画概要を知ることが出来る仕組みです。電話やメールで事前アンケート内容をさらに深堀りして、来場時には具体的な「宿題」を提示するというスタイルも加わったので、新たに事前アンケート用のKPIも設定しています。

集客のKPI

集客においては、お客様をイベント会場や会社へ来させることを広告宣伝業務のゴール(KGI)と設定し、以下をKPIの指標としています(WEB集客の場合)。

《来場数(KGI)》←《来場予約数》←《イベント予約ページ閲覧数》←《SNS広告閲覧数》 

大切なのは移行率

上記で紹介したように、業務プロセス(KPI)を細かくすればするほど、それぞれの目標値を達成する方法や行動(KDI)も具体的に見えてきます。しかし肝心の達成すべき具体的な目標数値が定まらなければ、何をどこまで頑張ればいいのかわかりません。なので各プロセスにおける「移行率」を知ることが重要になります。

営業で言えば、スタートの「来場」からゴールの「契約」までの移行率(=契約率)は15%~20%が一般的な指標ですが、その間にあるプロセス指標(KPI)は計測データがないので、目標値をいくつに設定すればよいかわからない、というのが多くの工務店の実情だと思います。

ジョンソンパートナーズでは、《来場》が10組なら《着座商談》への移行率は90%の9組、《着座》から《次アポ獲得》の平均移行率は50%なので目標は5 組というように、過去のデータが豊富なので、プロセスごとの目標数字を容易に決めることが出来ています。

昔から細かい計測をしてデータ化している工務店は多くはないと思うので、コンサルやFCなどデータが豊富な外部組織を活用すれば、より実践的な「KPI経営」が可能です。

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KDIの設定

プロセス指標の「KPI」の設定が終わったら次はそれを達成するためのアクション「KDI」の抽出・設定です。

前述した「次回アポイント獲得数」をKPIとすれば、「移行率50%」を実現するための具体的な行動指標を決めていきます。色々なアプローチがあると思いますが、例えば「顧客提示資料の見直し」、「次回アポイントの材料(資金計画の提案や間取り提案)のツール化」「週1回の接客ロールプレイングの実施」など、個人の行動レベルに落とし込んだ課題を抽出し、日数や回数など「計測可能な数字」で目標設定をしていきます。

上司から頭ごなしに指示されて行動するのではなく、自分の目標達成のための行動なので実践力が違います。たまたま営業を事例にあげましたが、設計でも工務でも、具体的な目標とやるべき行動が明確であれば、仕事へのモチベーションも向上します

また経営者や管理職にとっても、管理すべき数字や行動が明確になるので、指導ポイントや改善策を具体的に指示・提案しやすくなります。

工務店成功事例

ジョンソンパートナーズ加盟店でも「KPI経営」を実践している工務店が増えており、導入後の成功事例も数多くあります。

<集客>導入前=WEB集客数:35組/年|導入後=80組/年(+45組)

<契約>導入前=契約率:14% | 導入後:22%(8ポイント上昇)

<工期>導入前=115日 | 導入後:95日(20日短縮)

もちろんすべてが「KPI効果」とまでは言えませんが、一定の効果があったのは事実です。

KPI経営の継続

KPI経営手法を取り入れるのであれば、並行して「会議の見直し」も実施しましょう。

ここまで紹介してきたように、部門ごとの目標を定めますが、住宅会社はすべての部門を「リレー」して初めて事業が成り立ちます

例えばスタートである「集客目標」が未達成なら、当初の契約棟数や完工棟数目標を達成するために、移行率目標を上方修正するなど他の部門のKPIを変更する必要が出てきます。そのためには、事業に関わるすべてのスタッフが毎週、毎月の数値の推移を知り、修正目標に応じた対策を実行していかなければなりません。

なので、全社会議(経営会議)等で常に現状の数字を把握する機会を設ける必要があります。最低でも月1回は全社員参加の会議を実施すべきです。

そして、1年、2年とKPI経営と全社会議を継続していくことで、どんどん業務が効率化され業績も向上していきます。

つまり「KPI経営」はすべての企業にとってメリットの大きい、時代にあった合理的な経営手法だといえると思います。

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まとめ

・「KPI経営」とは、業務を「見える化」し効率を向上させるための手法

・仕組みを有効活用するポイントは「移行率」

・結果的にスタッフのモチベーション向上、管理手法の簡略化も実現

・継続することで業績向上につながる

追記

お読みいただいたように「KPI経営」は取り組む価値のある経営手法ではありますが、残念ながら「万能」ではありません。

目の前の数字を達成し安定経営を実現するには最適な手法ではありますが、10年後、30年後の"長期ビジョン"という視点でみれば不足している部分があります。例えば新規事業のアイデアなどは「KPI経営手法」だけではカバーしきれません。

最近は「デザイン経営」なる長期ビジョンに基づいた経営手法が注目され始めています。あれこれ方針がブレるのはいいことではないので、「KPI経営」で業績の安定を実現し、次のステップとして「デザイン経営」を取り入れるなど段階的な取り組みをおすすめします。

「デザイン経営」手法については、また別の機会で紹介していこうと考えています。

いかがでしたでしょうか。わたしどもジョンソンパートナーズでは、ご紹介した事例の他にも「経営のヒント」を数多く準備しております。また加盟店様の成功事例などもホームページで紹介していますので是非ご覧ください。

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