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一般の人に「ブランド商品」と呼ばれる有名ブランドは、高価格な上に基本的に値引きをしません。
住宅業界も含む多くの業界で価格競争が激しくなっていますが、その競争に巻き込まれないために鍵を握るのが「ブランド」です。
「ブランド」という言葉は「信頼の象徴」です。
価格競争に巻き込まれないためのブランディングについて、考えてみましょう。
「ブランド」という信頼を得るためには、作る人の力だけでは足りない。
著名なブランドの商品は高価格でも売れています。
有名な商品として、「夕張メロン」を例に挙げて考えてみましょう。
「夕張メロン」という名前だけで、顧客の心に「おいしいのかな?」という疑問はほとんどないのではないでしょうか。
「絶対おいしいはず、食べたい」という思いをかき立てられることが圧倒的な強みになるのは言うまでもありません。
顧客の心からの「信頼」を得るためには「良い商品」だけではなく、その商品を届けるため、知ってもらうためにさまざまな手を打つ必要があります。
多くの場合、「作る人」の力だけではブランドを創出することはできません。
有名ブランドとして、高価格でも売れるようになった理由と努力
同じ北海道で作られている類似したメロンでも、夕張ほどの知名度がないものもあります。
夕張メロンも当初は知名度が低く、北海道内でのみ消費されていたのですが、今では日本全国で販売される有名ブランドになりました。
なぜこのような成果が得られたのでしょうか? その理由としては以下の点が挙げられます。
独自のメロン品種と栽培技術
夕張メロンはメロン原種の種子を集める段階から夕張市が一体となって取り組み、大変な苦労をして作り上げた独自品種です。
また、安定した品質で生産を行うための栽培技術もまた夕張の農家が執念をかけて確立したものです。
品質保証・商標管理の差
夕張では夕張メロンの商標を夕張市農協が保持し、農協の厳格な検査に合格したものだけを「夕張メロン」として出荷する体制を他の産地に先駆けて確立することにより、その品質を保証しています。
流通体制の差
日持ちしないため、北海道内でのみ販売されていた夕張メロンの販路を広げるため、1982年に当時としては画期的な産地直送システムをいちはやく導入し、北海道外への出荷を可能にしています。
宣伝の差
知名度の低かった夕張メロンを全国的に広めるため、北海道でプロ野球の巨人戦が開催されたときに巨人軍の選手にホームラン賞として進呈。
その結果、「北海道で楽しみなのは夕張メロン」という選手のコメントが全国に流れ、一気に知名度を広げました。
このように、「良いものを作る」だけではなく、「その品質を守る」「お客様に知ってもらう」「確実に届ける」といったいくつもの努力によって、夕張メロンのブランドが成り立っていることがわかります。
「私のためのブランド」というポジショニングにも意識を置こう
「信頼」を得るための出発点と言える「良い商品」の意味合いにも注意が必要です。
夕張メロンの場合は「北海道夕張市のおいしいメロン」という商品自体の品質イメージでブランドを作ることができました。
一方、現代の著名ブランドの多くは特定のライフスタイルを持った顧客を前提にしています。
たとえば、スターバックスならば「都会で働くファッション意識の高いナレッジワーカー」、タバコのマールボロならば「力強さへのあこがれを持つ男性」という顧客を前提にした店作り・商品作りを行っています。
特定のライフスタイルを持った顧客に限定したポジショニングをするからこそ、「このブランドは、他の誰でもない、私のためのブランドだ」という信頼を得ることができるのです。
地域に根ざす工務店のブランディングにとっても、とても重要なことだと言えます。
安全に関わる高額商品ではブランドが営業を楽にする
何度も買い換えられない高額の商品や安全に関わる商品では特にブランドの効果が大きいです。
日常的に消費する食品・飲料、文房具、娯楽系の商品/サービスでは「今回はこれを買ってみよう」というお試し消費を期待できますが、たとえば自動車を「試しに買ってみる」ことはできません。
また、産地が不明瞭な食材等には安全性への不安を感じる方も多いことでしょう。
住宅は「高額」と「安全」の両方に当てはまる商品です。
だからこそ、顧客に「他の誰でもない、私のためのブランドだ」という確信を持たせることが出来れば、多くの著名ブランドがそうであるように値引き競争に巻き込まれず、余裕を持った仕事が可能になります。
まとめ
ブランドは信頼の象徴であり、ブランディングとは商品の「品質を守る」「価値を伝える」「届ける」といった多くの努力によって成り立ちます。
そして、その信頼の前提にあるのが「顧客のライフスタイル」の想定です。工務店のブランディングにとっても、お客様のライフスタイルを考える視点は欠かすことができないものといえます。