人の価値観がブランドの柱をつくる-コーポレートブランディングの考え方

売れる仕組み / ブランディング
2017年08月24日 by 金子 祐介

目次

コーポレートブランディングとは、「企業のブランドを作ること」を言います。
特定のライフスタイルを持った顧客像を想定し、その人々を徹底的にサポートするための価値観を固めることがコーポレートブランディングの柱です。

では、コーポレートブランディングをする上で一番大事なことは何でしょうか?

「お客様の役に立ちたい」という顧客像を確立すること

住宅をつくるお客様の中には、家づくりの細部を自分の趣味でこだわりたい方もいれば、入居した後の「暮らし」を楽しみたい方もいます。
「すべてのお客様」に支持されることを望んでいては、結局のところ誰にも支持されず価格のたたき合いになってしまいます。

「こんなお客様の役に立ちたい」と顧客像を想定して価値観を確立することこそが、コーポレートブランディングの柱です。

ルイ・ヴィトンが想定した顧客像とは?

現在、世界的に有名なルイ・ヴィトン。
ルイ・ヴィトンのコーポレートブランディングは世界的に大成功を収めています。
それは、単に伝統的な物作りをしていたのではなく、顧客のニーズを見据えて革新を続けることで、「私のための商品を作ってくれる」という信頼を獲得したからです。

徹底した顧客ニーズの特定が成功のカギ

ルイ・ヴィトンの出発点は、「旅行用トランクの製造」でした。
同社は創業期に「多くの荷物を持って旅行する中上流階級」を顧客として、「鍵のかかる丈夫で軽いトランク」を商品の基本形にいくつものバリエーションを展開していきます。

19世紀半ば当時は、馬車・鉄道・船と交通機関が多様化を迎えており、それぞれの旅の場面に応じてさまざまな商品を開発しました。

屋根のない馬車での移動用には、雨に降られた際に水が垂れ落ちるように丸い蓋を持ち防水性の高いトランクが求められました。
屋根のある鉄道向けには丸蓋の必要がないため積み上げやすい平蓋仕様を作り、長い船旅用には開けるとそのままワードローブ(衣装ダンス)になるトランクを開発しました。

商品のバリエーションはありながら、「中上流階級の顧客向け」は変えない

多様なバリエーションではありますが、いずれにしても「多くの荷物を持って旅行する中上流階級」向けの商品であることは変わりません。
特定のライフスタイルを持った顧客像を想定し、その顧客に対して徹底的にサポートする、という価値観・ミッションをかかげて事業を遂行することにより、該当する顧客から高い支持が得られ、それがブランドを作るのです。
同社は販売したすべての顧客を把握しており、顧客が鍵を紛失しても同社に問い合わせればすぐに開けられる体制まで整えていたほどです。

これらの徹底により、ルイ・ヴィトンのトランクは当時の中上流階級で大流行し、タイタニックが沈没した時にもその防水性の高さゆえにトランクにつかまって助かった人がいたという真偽不明の伝説まで生まれました。

アップル社が追求した価値観とは?

パーソナル・コンピュータ(PC)には、Mac(マック)系とWindows(ウィンドウズ)系の2種類がありますが、Mac系のPCを作ってきたのが、iPhoneでも有名なアップル社。
Macは、アップル創業者スティーブ・ジョブズが「個人の創造性を最大限に引き出すツールとしてのPCを作りたい」という強い価値観のもと作られたPCです。

そのためにアップル社がこだわったことのひとつが「高いグラフィックおよびマルチメディア機能と使いやすい仕様」、もうひとつが「PCそれ自体が美しいマシンであること」です。
前者を追求したためにMacは高価になり、同時に後者を追求したために機能性を犠牲にしたとPC業界では言われています。

しかしその結果、高価格にもかかわらずMacは熱烈なファンを持ち、デザイン・編集・出版・音楽といったクリエイティブ業界では独占的な地位を築いただけでなく、現在ではエンジニア層からも多くの支持を得ています。

人は価値観の合う商品・サービスに手を伸ばす

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「このブランドなら、私の欲しいものを作ってくれる」というブランドへの信頼の土台には、共通する価値観があります。
ルイ・ヴィトンであれば、長い旅をする人を徹底的に支えるという価値観。

Macであれば、個人の創造性を徹底的に引き出すという価値観。いずれにしても共通するのは、どんなお客様に対して奉仕するのか、という顧客像を想定することです。

顧客像を想定することによってこそ「この作り手は私のために仕事をしてくれる」という信頼が得られ、顧客の率直な「願い」が寄せられるようになります。
その願いに応え続ければ、もはや価格で他社と競う必要はありません。


人は価値観の合う商品・サービスに手を伸ばします。
そして、その作り手は長く支持されるブランドとなります。

まとめ

ブランドを作り育てる「ブランドマネジメント」は、特定のライフスタイルの顧客を想定することから始まります。
「ブランド」とは顧客が作り手に寄せる信頼の象徴ですが、その信頼は「このブランドなら私のための商品を作ってくれる」という顧客の思いから生まれるものです。

そのような顧客に信頼されるブランドを作りコーポレートブランディングをするために、まず「どのような人々を顧客にするのか」という想定するところから始めていきましょう。

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